フィチン

5-風評を助長した「発芽玄米」のマーケティング戦略

まさかの援護射撃!? 「発芽玄米ブーム」が玄米危険説を広めたワケ


ハカセ!フィチンさんが実はいいヤツかもしれないって分かったんですけど、そうなるとますます謎が深まるんですよ!ちょっと前に、**『発芽玄米』**って流行りましたよね?あれって、『発芽させると**毒のフィチン酸が分解されて減って、体にいいGABAが増えるから、こっちの方が断然ヘルシーで安心!**』って聞いたんですけど…あれは何だったんですか?

おお、出たな、発芽玄米! ケンタくん、よく覚えておったのう。確かに、ちょうど世間で『玄米のフィチン酸が危険かも…』なんて囁かれ始めた頃に、タイミング良く登場して注目されたのが、その発芽玄米じゃったな。

ですよね!だから僕、『やっぱり普通の玄米はちょっと怖いけど、発芽玄米なら大丈夫なんだ!』って思って、ちょっと高いけど買ってみたりして…。

うむ。多くの人がそう考えたかもしれんな。そして、その時の**売り文句、キャッチコピー**がまさに、ケンタくんが言った通りじゃ。『発芽パワーで、気になる**フィチン酸を分解!**しかも体に嬉しい**GABAはアップ!**これなら安心してお召し上がりいただけます!』…みたいな感じじゃったろう?

そうそう!まさにそんな感じでした!だから、てっきりフィチン酸がゴッソリ減るんだと…。

ところがじゃ、ケンタくん。ここで冷静に、**実際のデータ**を見てみる必要があるんじゃ。ちょっと数字が出てくるが、頑張ってついてくるんじゃぞ?

うっ…数字は苦手だけど、頑張ります!

よし。ある資料によるとじゃな、普通の玄米100gに含まれる『フィチン酸』は、まあ大体**680mg~764mg**くらい。そして、リラックス効果があると言われる『GABA(ギャバ)』は、**4~5mg**程度じゃ。

ふむふむ、これが普通の玄米のスペックですね。

では、次に、発芽処理をした発芽玄米100gを見てみよう。フィチン酸は…おや?資料によっては**764mg**と、あまり変わらん、むしろ最大値と同じくらいじゃな。一方で、GABAは確かに増えておって、**15mg**くらいになっておる。

あれ!?フィチン酸、あんまり減ってなくないですか?GAGAは確かに普通の玄米の3倍くらいに増えてるけど…

そうなんじゃ!ここで、『GABAが増えた分だけ、元になったフィチン酸が分解されて減ったんだろう』と**最大限、発芽玄米に有利に考えて計算**してみようか。GABAは元の玄米から約10mg増えた。じゃあ、その10mg分のGABAを作るために、どれくらいのフィチン酸が使われた(分解された)か?という話じゃが…なんと、元のフィチン酸の量(約764mg)から見ると、その割合は**たったの1.3%前後**なんじゃ!

い、いってんさんパーセント!?!?!?え、それって…ほとんど減ってないってことじゃないですか!!『分解!』とか『安心!』とか言ってたのに、誤差レベル!?

そういうことじゃな。GABAが増えるのは事実じゃし、それはそれで良いことかもしれんが、『フィチン酸が分解されて安全になった』と言うには、**あまりにも心許ない数字**じゃろう?ましてや、我々がここまで見てきたように、そもそもフィチン(フィチン酸ではない)は過剰に恐れるようなものではないのだから、『発芽させないと危険』というのはおかしな話じゃ。

うわー…なんか騙された気分…!

まあ、売る側も悪気はなかったのかもしれん。『少しでも良い点を強調したい!』という気持ちが先走ったのかもしれんが…問題は、この**誇張された宣伝**が、**世間の『玄米危険説』に、図らずも“お墨付き”を与えてしまった**ことなんじゃ。

お墨付き…?どういうことですか?

『発芽させれば安心です!なぜなら問題のフィチン酸が減るから!』という宣伝が広まれば広まるほど、人々は『ああ、やっぱり普通の玄米には“問題のフィチン酸”がたくさん入っていて、良くないものなんだな。発芽させなきゃダメなんだ』と、**無意識のうちに刷り込まれてしまう**。結果として、**発芽玄米を持ち上げる宣伝が、かえって普通の玄米への不安を煽り、危険だという風評を強化してしまった**…という、皮肉な状況が生まれてしまったんじゃよ。

なるほど…!発芽玄米を良く見せようとしたことが、逆に普通の玄米を悪者にしてしまったんですね…。良かれと思ってやったことが裏目に出る、みたいな…。

うむ。もちろん、発芽玄米にも独自の食感やGABAが増えるという利点はある。それを否定するつもりはないんじゃ。じゃが、**『フィチン酸が減るから安全』という理由だけで発芽玄米を選ぶ、あるいは普通の玄米を避ける、というのは、科学的な根拠が乏しい**と言わざるを得ない。この一件は、健康情報、特に宣伝文句がいかに私たちの認識に影響を与えるか、という良い教訓じゃろう。

いやー、今回の話、本当に目からウロコでした!玄米危険説って、色んないきさつがあったんですね…。

そうじゃ。一つの情報だけを鵜呑みにせず、多角的に、そして科学的な根拠に基づいて物事を見る、というのがいかに大切か、ということじゃな。さあ、これで玄米に関するモヤモヤは、だいぶ晴れたかのぅ?

はい!もうバッチリです!これで明日から、自信を持って美味しい玄米が食べられます!

 


POINT

風評を助長した「発芽玄米」のマーケティング戦略

1.「玄米危険説」が囁かれ始めた時期に、「発芽玄米」が健康食品として注目を集めた。

2.販促の論理:「発芽処理により、フィチン酸が分解されて(減少し)、体に良いGABA(ギャバ)が増える。だから発芽玄米は安全で健康的だ」というマーケティング・ストーリーが展開された。

3.データによる検証:
具体的なデータ(通常玄米vs発芽玄米のフィチン酸量、GABA量)を引用。
*通常玄米100g:「フィチン酸」680mg~764mg、「GABA」4~5mg
*発芽玄米100g:「フィチン酸」764mg、「GABA」15mg
*計算:GABA増加量(約10mg)に相当するフィチン酸減少量は、元の量(約764mg)に対してわずか1.3%程度に過ぎない。

4.問題点の指摘:
このごく僅かなフィチン酸の減少を「分解されて安全」と強調することは、科学的根拠としては極めて弱い。
このような誇張表現が、「フィチン酸(≒フィチンと誤認されている)はやはり良くないものなのだ」という印象を消費者に与え、結果的に「玄米(非発芽)は危険」という風評を裏付け、強化してしまった皮肉な側面がある。

『玄米、フィチン』の文献