アブシシン酸

9-アブシシン酸は植物の「健康を守るお医者さん」

アブシシン酸は悪者! いいえ、植物にとって「なくてはならない守り神」

ところで、博士、この「アブシシン酸」だけど、どんなものなのかもう少し具体的に知りたんだけど……、

いい質問だね。
実は「アブシシン酸」は植物にとってはとっても大切な物質なんだよ。
しかも、植物だけじゃなく、海藻やきのこ、麹(こうじ)にも含まれていて、植物の研究をしている人なら、誰でも知っている有名な物質だよ。

へえ~!いろんなものに入っているんだね。でも、どうしてそんなに大切なの?

それは、もし植物の中にアブシシン酸がなかったら、植物は生きていくことも難しくなるからなんだ。

えっ、そんなに重要なんだ!

まいちゃんもナスやトマト、きゅうりなどの野菜や、リンゴやミカンなどの果物を食べるだろう?

うん、大好き!ビタミンとかミネラルがいっぱい入ってるんでしょ?

その通り!その野菜や果物の実が、ちゃんと熟して食べごろになるのも、アブシシン酸のおかげなんだ。

じゃあ、もしアブシシン酸がなかったら、植物はどうなっちゃうの?

いいところに気が付いたね。もしアブシシン酸がなかったら…
*まず、植物は水不足になり枯れるかもしれない。
*それに、種や花のつぼみが適切な時期に休めず、多くの植物が絶滅するかもしれない。
*果物もちゃんと熟さないから、動物たちが種を運んでくれなくなるかもしれない。

大変だ!アブシシン酸って、まるで植物のスーパーヒーローみたいだね!

まさにその通り!
また、アブシシン酸は「植物の水の番人」とも言えるんだ。

水の番人?どういうこと?

植物が乾燥してきて「お水が足りない!」と感じると、アブシシン酸が働いて、葉っぱや茎の表面にある小さな穴(気孔:きこう)を閉じるんだ。そうすることで、体からお水がどんどん逃げていくのを防いでくれる。もし気孔が開きっぱなしだったら、植物はあっという間にカラカラになっちゃうからね。

1.植物内の水分量の増減で『アブシシン酸』の濃度が変化する
アブシシン酸』は植物が乾燥状態になるほど濃度が上昇し、植物表面の気孔を閉じる働きがあります。これにより、植物の水分が保持され乾燥を防ぎます。
乾燥状態が解消されると『アブシシン酸』の蓄積量は減少し、植物表面の気孔が開かれてきます。

なるほど~!じゃあ、お花が咲く時期とかも関係あるの?
春に梅や桜が咲くけど、あれもアブシシン酸のおかげ?

さすが、まいちゃん!
実はね、梅や桜のつぼみは、前の年の夏にはもうできているんだ。
でも、秋には咲かないだろう?

うん、咲かないね。もし秋に咲いちゃったら、冬の寒さでダメになっちゃうもんね。

その通り!秋に花が咲かないように「まだだよ~」ってブレーキをかけているのが、アブシシン酸なんだ。そして、冬の寒さを経験すると、アブシシン酸が少しずつ減っていって、今度は「さあ、咲く準備だ!」と「ジベレリン」という別の物質が増えてきて、春にきれいに花を咲かせることができるんだ。

2.果実、種子の成熟:植物の果実や種子が作られる時期に濃度が上昇して、果実や種子の成熟を促進させます。
3.種子の発芽、花芽の開花:
『アブシシン酸』は一定の低温状況が続くと濃度が減少し、『ジベレリン』の濃度が上昇します。その結果、種子の発芽および、花芽の開花が促進されます。

アブシシン酸とジベレリンのコンビネーションなんだね!

これは種が芽を出すタイミングにも関係しているんだよ。秋にできた種がすぐに芽を出したら、冬の寒さで小さな芽は枯れるでしょう?それを、アブシシン酸が「まだだよ、春まで待とうね」って発芽を抑えているんだ。

果物も、アブシシン酸が関係してるって言ってたよね?

そうだね。植物にとって果物は、動物に美味しく食べてもらって、種を遠くまで運んでもらうための大切な作戦なんだ。

ふんふん。

その果物も、中の種がしっかりできる前に食べられちゃったら困るだろう?
だから、種ができるまでは葉っぱと同じ緑色をしていて目立たないようにして、種が完成すると「今が食べごろだよ!」って、アブシシン酸が働いて、赤や黄色みたいに鮮やかな色をつけてアピールするんだ。

わー!アブシシン酸って、植物を守ったり、子孫を残すために、すっごくたくさんの仕事をしてるんだね!

まさにその通りだ、まいちゃん。
アブシシン酸は、植物を乾燥から守り、適切な時期に花を咲かせたり芽を出させたりして、子孫を残し、植物が絶滅しないように守ってくれている、まさに「縁の下の力持ち」のような存在なんだよ。

博士の話を聞くまでは、アブシシン酸って玄米だけに含まれるものだと思っていたけれど、すべての植物に含まれていたんだね。


POINT

アブシシン酸(ABA)は、植物にとって“お守り”のような大切な成分

ABAは、植物が自分自身を守り、元気に生きていくために作り出す「植物ホルモン」の一種で、多くの植物に含まれる自然な物質。

植物が厳しい環境、例えば水不足や低温といったストレスにさらされた時に、それに耐え抜く力を与えてくれたり、種がむやみに発芽してしまわないように適切なタイミングを教えてくれたりする。

アブシシン酸は、特別な植物だけに含まれているわけではなく、野菜や果物、穀物など、多くの植物に自然に含まれている物質で、アブシシン酸は植物の生命活動に必須の成分。